特別インタビュー

30代半ばでクラウドインフラ領域へ|未経験分野への挑戦で思いがけないキャリアが開けることも!

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メタップスホールディングス プラットフォーム戦略部 マネジャー/SRE チーフエンジニア 山北 尚道さん

Naomichi Yamakita・学生時代からエンジニアを志し、卒業後はベトナム・ハノイにてオフショア事業を手がける知人の会社にCTOとして参画。アプリケーション開発を中心に、多くのマネジメントを経験後、数社を経て2015年にメタップスに入社した。徐々にクラウドインフラにも携わり始め、現在は社内横断的なテックリードやSREチーフエンジニアを担いながら、SREのためのイベントログ一元監視サービス「srest(スレスト)」のプロダクトオーナーを兼務する。「AWSDevDay Tokyo 2019」登壇、「Amazon Web Services ブログ」「builders.flash」への寄稿をはじめ、X(旧Twitter)やQiitaなど社外への発信にも注力している

20代は海外でスタートアップCTOに。小さい会社ならではの多様な経験ができた

パソコンに興味を持ったのは高校生の頃です。ちょうどインターネットが流行り始めた時期で、自分でサーバーを構築したり、コンテンツを公開したりして楽しんでいました。その興味を追い求めて情報系の学部に進学し、自然な流れでエンジニアを志望しました。

一般的な就職活動はせず、インターンシップをしていた企業にそのまま入社しましたが、働き始めてすぐに「自分は一から作り出せる環境の方が向いている」と感じて退社を決めました。

知人に誘われて、ベトナム・ハノイでオフショア開発(※1)を手掛けるスタートアップ企業に参画しました。この決断をしたことが、キャリアにおける最初のターニングポイントです。

当時の私はCTO(最高技術責任者)という肩書きでしたが、人手が足りないのがスタートアップの常。実際には要件定義から実装、インフラ構築、教育、プロジェクト管理に至るまで「なんでも屋」状態でした。ネットワークやサーバーなどのインフラ周りはあまり詳しくなかったのですが、勉強をすることになりました。

社内のメンバーが増えてからは、インフラ領域の業務は減っていきましたが、「インフラエンジニアをどう育てていくか」ということには関わり続け、チームビルディングについても多くの経験ができました。

日本とベトナムを10年近く行き来しましたが、開発からインフラ領域、エンジニア教育と幅広い経験ができ、「めちゃくちゃ成長できた」という実感があります。

この経験から、 これからエンジニアを目指す人にも、スタートアップ企業のような小さい会社でキャリアをスタートすることは1つの良い選択肢だと伝えたいです。人が少ない会社ほど自分が担当する領域は広くなり、多くの経験ができます。もちろん勉強は必要ですが、いろいろなことができるようになるほど、仕事のおもしろさは変わってくると思います。

山北さんのキャリアアップの変遷

また、あえて中規模くらいの会社を選んでみる、という選択肢もありだと思います。

現在勤めるメタップスホールディングスは、エンジニアが約30人在籍しています。このくらいの規模の会社になると、フロントエンドエンジニアとバックエンドエンジニア、SRE(※2)エンジニアという明確な役割分担があるので、業務経験が偏らないようにするには、できるだけいろいろなチームを回るチャンスがある会社に注目すると良いと思います。

各分野の専門家が集まっているので、若い人から見れば「エキスパートに教わりやすい」という良さはあると思いますし、各社員がやりたいことにチャレンジしやすい環境を作っているので、能動的に仕事したい人にはとても良い環境だと思います。

※1 オフショア開発……海外の企業や現地法人に対し、ソフトウェアの設計や開発、インフラ構築、運用保守などの作業を委託する開発手法のこと

※2 SRE(Site Reliability Engineering:サイト信頼性エンジニリング)……Googleが提唱した、システムの信頼性、スケーラビリティ(拡張性)、パフォーマンスを確保するためのエンジニアリングアプローチ。おもな役割として、運用業務の自動化、システムの監視・分析、改善・拡張などがあり、インフラだけでなくアプリケーション開発支援も業務範囲に含まれる。日本では2017年にGoogleのSREメンバーによって書籍が出版されたことで、近年多くの企業から注目されている

「自分にはこの領域しかない」と思い込まず広い視野でキャリアを考えよう

ベトナムから日本に戻った後、数社を経験し、2015年にメタップスに出会いました。当時は決済関連のサービスやアプリ解析ツールなどを手掛けており、今までの経験を活かしつつ、未経験の領域で新しい仕事ができそうだと興味が湧いたのです。上場直前の時期だったことも含め、「ここで働くのはおもしろそうだな」という直感が働きました。

最初は決済関連のサービス開発を担当していましたが、3年ほど経ちそれが一段落してきた頃、徐々にクラウドインフラに携わるようになります。2010年代は、ちょうどオンプレミス(※3)からAWSなどのクラウドに移行していった時期。元々バックエンド領域は好きで、セキュリティや基盤を固めることに興味がありました。

これによって、新たな道が開けました。当時の日本では本格的にやっている人がまだ少なかったSREの領域にいち早く着手でき、AWSのイベントに登壇者として招待されるなど、エンジニアとしての飛躍につなげることができました。この点で、このキャリアチェンジは私にとって最大のターニングポイントと言えるかと思います。

この経験から、「キャリアで壁を感じたら、自分があまりやってこなかった領域の仕事に手を出してみることも考えてみると良い」ということをアドバイスしたいです。技術トレンドはどんどん進みますし、「20代を費やしたのだから、自分にはこの領域しかない」と思い込むことなく、広い視野で検討してみることをおすすめします。

※3 オンプレミス……自社でサーバーなどの設備を保有して運用や管理をすること

エンジニアのキャリアに迷ったとき

エンジニアにはそれぞれの適性に合ったポジションがある 

フロントエンド、バックエンド、インフラといろいろな領域を経験してきましたが、それぞれに適性やおもしろさが異なる実感があります。

たとえば、インフラ基盤は新しい機能をアップデートしながらどんどん強化していくことができ、それによってシステムの縁の下の力持ちになれます。アプリケーションは中身をどんどん入れ替えていきますが、基盤の方は積み重ねることができるので、ここが私にとって楽しいと感じる部分です。

フロントエンドエンジニアが携わることになるアプリケーションは、見た目にすぐ変化を出せる分、ユーザーの反応がストレートに返ってくるおもしろさがあります。トレンドのものをどんどんやれるので、新しい技術に触れるのが好きな人は、フロントエンドエンジニアが向いていると思います。

いろいろなエンジニアを見てきましたが、私の経験上、インフラエンジニアは保守を担うためか、まじめで堅実な人が多い印象です。障害が発生したときの緊急対応は大変な業務の1つだと思いますが、サービスの信頼性を上げる立場として「障害を起こさない仕組みを自分たちでどう作るか」、「再発をどう防ぐか」といったことを試行錯誤する過程には、かなり醍醐味を感じています。

それぞれの領域の面白さや適性について

ちなみに現在、私が力を入れているSREの領域は、アプリケーションとインフラの中間です。どちらの領域についても広く理解し、俯瞰的に見る力が必要です。そのため、若手エンジニアがいきなり入ってきにくい領域ではあるのですが、ここをやりたいと言ってくれている若手のメンバーがいれば、幅広い領域を学んでもらえるよう意識しながらアサインをしています。

インフラ領域は手を動かして覚えるのが早道。業務以外の勉強も心掛けよう

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未経験からインフラエンジニアを目指す人には、アプリケーションを乗せなくても良いので、まずは「手を動かして作ってみる作業」を大切にしてみてほしいです。

障害対応は本やマニュアルに書いている通りにはいかないケースが多く、ただ頭に知識を入れるだけでは感覚がつかめてこないからです。迅速に復旧させる力を鍛えるには、テスト環境で手を動かしてみるのもおすすめです。

自分の手を動かして基礎を理解したら、主流になってきているクラウドの勉強に取り掛かりましょう。生成AI(人工知能)が登場したことで、既に簡単なコードは自分で書かなくて良い状況になってきています。当社でも「Github Copilot」をエンジニア全社員が使えるようになっており、一からコードを書く機会は今後も減っていくと思います。

また、インフラエンジニアとして成長し続けるには、「業務以外の勉強をすること」、「能動的にアウトプットを出し、社外の人とも接点を持つこと」の2点を心掛けると良いと思います。

業務を通じてできる勉強はどうしても偏ってしまいますし、忙しいと「与えられた目の前のタスクをこなす」ということだけに注力しがちです。そうならないよう、仕事以外の勉強に取り組む余地は多少残しておくこと。そしてチームに違うタスクが降ってきたときには、自ら手を挙げて「やります」と言える人であってほしいですね。

特定の領域に閉じこもらないようにも気を付けてください。「自分はインフラエンジニアだから」と突っぱねず、広く柔軟に勉強できる人のほうが、未来は明るいと思いますね。いろいろ知っていた方が、ほかの領域のエンジニアとも良い関係が築けるはず。

それに最近は、各領域の境界線も曖昧になってきています。開発とインフラの両方がわかる人は母数が少ない分、希少性あるエンジニアになれると思います。「要件定義」や「クライアントのニーズを理解する」など、AIが苦手な仕事もできるようになっておくと、将来的にも安心です。

インフラエンジニアとして成長するには「アウトプットの姿勢」も重要

勉強をしたら、それをアウトプットにつなげていってください。成功しているエンジニアたちはすべからく、社外にどんどんアウトプットを出しています。バグを見つけてオープンソースやフリーのソフトウェアの改善に貢献してみたり、対外的なイベントに登壇したり、できることからやってみると良いと思います。

私自身もキャリアにおいて、アウトプットをすること、それによって人脈を広げることを心掛けてきました。転職のきっかけも、すべて人とのつながりです。声を掛けてもらい「ここでやってみたい」と思ったら移る、ということを繰り返してきました。

積極的にイベントに登壇したり、発表をしたりしていると、いろいろな会社の人から興味を持ってもらえるので、キャリアのチャンスにも恵まれやすいです。若手のうちからどんどんイベントに参加して人脈を広げ、スキルが付いてきたら登壇側の経験もできるとベストかと思います。

インフラエンジニアの各成長過程で心がけると良い姿勢

ちなみに、私がこれまで新しい会社に移るときに重視してきたポイントとしては、「やったことない分野ができるかどうか」「自由にやれる風土があるか」「人の雰囲気」の3点です。

会社の知名度や規模などにはこだわらないタイプですが、「社内の人たちが能動的に仕事をしていて、できるだけ自分と近いマインドを持っている仲間と働きたい」という気持ちは持っています。

これからについては当面、SREの領域でチャレンジをしていきたいです。インフラエンジニアの仕事を楽にする仕組みを自分たちの手で作っていきたいですね。基盤づくりを通じて、会社やプロダクトの成長に貢献していくことが、今後のキャリアビジョンです。

山北さんと描くインフラエンジニアの未来

取材・執筆:外山ゆひら

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