特別インタビュー

「事業を下支えできること」がインフラ領域を担う醍醐味|スキルを広げて市場価値を高めよう

ココナラ システムプラットフォーム部 部長 / Head of Information 川崎 雄太さん

ココナラ システムプラットフォーム部 部長 / Head of Information 川崎 雄太さん

Yuta Kawasaki・法政大学卒業後、電力会社に入社。入社4年目からインフラエンジニアとしてキャリアをスタート。その後リクルートテクノロジーズ (現リクルート) 、アドテク企業を経て、2020年10月にココナラへジョイン。プロダクトインフラを担当し、2021年からは社内情報システムの担当も兼任。現在はHead of Informationの役割として、システム基盤に関する業務に従事している

新人時代は開発を経験。20代半ばでインフラ領域を担う楽しさに目覚めた

エンジニアを志したのは大学時代。統計学の授業でプログラミングに触れる機会があり、処理の正確さとスピードの両方を実現できるプログラミングのおもしろさを実感したのがきっかけです。ゼミの先輩たちの約7割がSEとして就職していたので、実際の仕事の話もたくさん聞いて興味を持ちました。

「仕事=社会貢献」というイメージを持っていたので、就職活動ではエンジニア職として入れるインフラ系の企業を検討。大きな電力会社から内定を一番早くいただき、特に迷いなく入社を決めました。

新人時代は、フロントエンドやバックエンドのアプリケーション開発を担っていました。入社4年目に経理系のシステムの部門に異動となり、そこで初めてインフラの仕事を担当することに。開発をやっていた頃はサーバーやネットワークの存在や重要性を肌身に感じてはいませんでしたが、いざやってみると「アプリやシステムを支える大事な根幹部分だな」と実感し、縁の下の力持ちとなって人には見えない仕事を担う楽しさを知りました。「インフラ領域を担えるエンジニアは少ないし、やっていて楽しい。このキャリアを続けてもいいかも」と思ったことを覚えています。

インフラエンジニアのキャリアがスタートしたという点で、ここが最初のターニングポイントと言えるかと思います。 

インフラエンジニアとしての経験を積むなかで、次なる転機が訪れたのは入社7年目のこと。東日本大震災が発生し、「一生安泰だと思っていた電力業界もそうではないのだな」と気付かされ、より筋肉質な事業会社(自社でサービスを作っている会社)に移ってみたい気持ちが芽生えました。

いくつかの転職先を紹介いただいたなかで、選んだのはリクルートテクノロジーズ (現リクルート) です。人のライフイベントに広く関われる会社だったことに加え、研究開発やインフラ領域で有名なエンジニアがたくさん在籍していたので、「ここに入れば成長できそうだ」と感じたことが理由です。

川崎さんのキャリア・ヒストリー

インフラ視点を活かせば、事業を救う力を持てると知った

2社目では、期待どおりインフラエンジニアとして、そして社会人としても大きく成長できた実感があります。1社目では意識できていなかった「事業をどう支えるか」「費用対効果が合うか」といった目線を培えたことは、その後のキャリアでも非常に役立ちました。

ビジネスの目線が養われることに加え、エンドユーザーの声がダイレクトに届いてくることも事業会社の良いところです。SNSで「このサービス使いやすい」といったユーザーの声をすぐに拾えるので、モチベーションにつながります。これからインフラエンジニアを志す人は、キャリアのどこかで一度は事業会社で働いてみたほうがいいと思いますね。

また同社では、その後のキャリアの指針となるような貴重な経験もできました。

とある大きなシステムの刷新を担当した際、アクセスが集中して半日ほどシステムがダウンしてしまったことがありました。最終的にアプリ側に原因があることがわかったのですが、本来は復旧に2日間くらいかかってもおかしくないような状況のなか、インフラ部門が率先して問題解決に動いて半日で立て直すことができました。結果、売上毀損を大幅に減らすことに貢献できたのです。このときは、会社側からも感謝の言葉と評価をいただきました。

「システムの基盤は動いていて当たり前」と思われがちで、それまでは「減点式で評価をされるポジション」という認識でした。もちろんトラブルを解決すれば各所から感謝の言葉はいただきますが、この出来事を経て「加点もいただけるポジションなのだな。このレイヤーでも事業を救えるのだな」と心から実感できたのです。

川崎さんからのメッセージ

インフラエンジニアを志すならば、障害対応は絶対に切り離せない仕事です。24時間365日動いているシステムやサービスが大半なので、「1秒でも早く復旧させる」というミッションに向かって奮起する場面は必ず経験すると思います。一番の頑張りどころですが、その分、自分たちの力でマイナスをゼロに戻せたときには、やりがいや達成感も大きいです。

事前にいろいろなシミュレーションはしておきますが、トラブルは起きる前提で考えています。いざトラブルが発生したときには、俯瞰的に全体を見ながら、最速で「どうすれば解決できるか」を考え、可能性を一つひとつ潰していきます。自分たちの担当範囲だけでなく、アプリ側の事象も積極的に見に行きますね。「自分たちのところに問題がなくても、どこか追いかけられるかも」という目線で、自分から積極的に開発側に声をかけていきます。

「業務範囲を超えて一緒に解決しよう」と試みる当事者意識を持てるかどうかは、インフラエンジニアの適性や相性ともかかわる部分かもしれません。インフラエンジニアはシステム稼働の“信頼性”の部分を司る役割です。そういった意味では、「自分たちの業務範囲はここまでだから、後はよろしくね」というタイプの人にはあまりマッチしないポジションかもしれません。

自分が興味を持てるプロダクトを下支えしたい。その思いが原動力に

入社から4年ほど経ってリクルートを出ようを決めたのは、退社して活躍している人たちの様子を見聞きするなかで「自分も新たなチャレンジがしたい」と思い始めたのが理由です。同社では一定期間後に次のステージへ向かう人が多い企業文化があり、一緒に働くメンバーの顔ぶれも変わってきていた時期でした。

「次は大きな看板のないところで挑戦してみよう」と決め、AdTech(アドテク)系の会社に移ることに。インターネット広告のシステムは、大量の処理をものすごいスピードでさばいていくのが特徴です。リクルート時代は「自社サービスの信頼性」を何より重視していましたが、今度は信頼性に加えて「スピード」が重視される環境に変わり、また違った新鮮な体験ができました。

併せて、リソースに限界があるなかでどうするか、という目線も養えましたね。少数体制のチームに変わったことで「何からやるべきか」の優先順位を考える意識が身に付きましたし、経営層との距離も近くなり、トップと合意形成をしながら進めていく経験もできました。

3年ほどでココナラに移ることにしたのは、新型コロナウイルスの流行がきっかけです。2020年は多くのクライアントが広告を出せるような状況ではなくなり、社内でも進めようとしていた技術的な施策はすべてペンディングに。「学びたかったことは学べたし、中長期的なキャリアを考えても、そろそろ別の会社に行こう」と思い立ちました。

これから伸びていくプロダクトを手がけている事業会社に移りたいと考え、いろいろな会社を検討した結果、一番将来性を感じたのが当社ココナラです。スキルマーケットという産業に未来を感じましたし、何より「時間や場所、環境、年齢といった制約から解放し」「あらゆる人が平等にバッターボックスに立てる機会を提供する」といった社長のメッセージを聞いて、日本全体の労働生産性の向上にもつながりうる非常に魅力的なプロダクトだと感じました。

入社から半年後には上場準備が始まり、上場審査に耐えうるシステム環境やセキュリティの整備をおこなう経験もできました。2021年3月には無事にマザーズ上場を果たし、この1年半ほどで社員数もかなり増えています。今は組織として成果の最大化を目指し、さらに上を目指していくための基盤づくりに取り組んでいる最中です。 

「このプロダクトを下支えしたい」という思いを持てることが、信頼性の向上、コストの削減、ローンチのスピード感など、すべての局面において大きなモチベーションにつながっています。自社のプロダクトに興味を持てるかどうかは、インフラエンジニアとして働くうえでも重要なポイントだと感じています。

川崎さんからのアドバイス

特定のスキルで突き抜けるか、複数の領域がわかるエンジニアを目指すか

ココナラ システムプラットフォーム部 部長 / Head of Information 川崎 雄太さん

インフラ領域は他の領域と比べて、技術の汎用性が高いと感じます。開発手法やプログラミング言語は新しいものが出てくると淘汰されていくことも少なくないですが、インフラの技術や知識はトレンドに左右されにくく、知識をコツコツと積み上げていける良さがあります。

キャリアを積んでいく方向としては、2通りあると思います。「インフラの信頼性を担保するための技術」をとことん考え抜ける人は、一点突破型で、縦方向にスキルを尖らせていくのは1つの選択です。あるいは、スキルを横に広げていくキャリアもあります。わかる領域をどんどん横に広げていき、集合知をもってトラブル時の解決力を高めていけると、いろいろな企業から重宝されると思います。

私は後者のタイプです。1社目で開発経験があることもプラスになっていますし、2社目でセキュリティ組織やSRE組織(サイト・リライアビリティ・エンジニアリング/サイト信頼性工学)のチームリーダーを務め、3社目でもセキュリティ組織の立ち上げを経験できたことが、今の強みになっています。

もし若い頃の私のように、先々に悩んでいる若手エンジニアがいたら「今やっている領域以外にも担える領域はあるから、横の領域をいろいろと見てごらん」とアドバイスしますね。

最近は開発と運用のチームが連携して作業することで生産性と信頼性の最適化を目指すDevOps(デブオプス)といった開発手法も登場していますし、「インフラ×セキュリティ」「インフラ×SRE」など、わかる領域が増えるほど希少性が生まれ、市場価値を高めていけると思います。

クラウド全盛時代なので、キャリアのどこかでクラウドを触る機会はあるでしょうが、かといって、自社でサーバー運用をする会社が完全になくなることはありません。サーバー運用の知識や経験もあるに越したことはありません。チャンスがあれば、ぜひ経験してみてください。大切なのは、常に近しい領域にスキルを広げる意識を持っておくこと。インフラレイヤーだけに閉じこもってしまわず、積極的にいろいろな技術に触れてみてください。

2通りのキャリアの磨き方

また悩んだときは、自分ひとりで考えず、友達や先輩・後輩に頼って相談したほうがいい、ということもアドバイスしたいですね。考えがまとまっていなくても、誰かに壁打ち程度に聞いてもらうだけでも何かヒントをもらえるはずです。

年齢を重ね、最近はすっかり相談される側になりましたが、「5年後、10年後、この分野を自分の生業にしていけるだろうか」といったことは多くの若手エンジニアが悩んでいるテーマだと感じます。業務の話で終わってしまわないよう、最初から「キャリアに関する相談をしたい」という前提で、1on1の面談をガンガン持ちかけてみると良いと思います。直属の上司はもちろん、他部署の先輩との面談をしてみるのもおすすめです。いろいろな気づきを得られると思います。

若いうちはいろいろな案件に入って「軸足を置きたい領域」を探そう

これまで4社を経験したことで、4社分の考え方を養えたことは自分の血肉になっていると感じます。仕事との相性は、自分の手を動かしてやってみないとわからない部分も多いもの。必ずしも転職をする必要はありませんが、20代のうちはできるだけいろいろな仕事を経験しておいたほうが良いと思います。そのなかから軸足を置いてやっていけそうな領域や、「自分はこれが得意だ、楽しいな」と思える分野を見つけていきましょう。

30代になったら、なんとなくこっちかな、という程度でも構わないので「マネジメントラインに進むか、エキスパートを目指すか」について考えてみると良いと思います。

私は20代半ばで、マネジメントラインを目指そうと決めました。早いうちに方向を決めたこともあって、2社目以降はずっとマネジメントポジションを担えており、30歳前後で20名程度のチームマネジメントも経験できました。

インフラエンジニアとしての「キャリアの歩き方」

未経験からスタートする場合、まずはインフラエンジニアの仕事について大まかなイメージを持つことが肝心です。技術は後から付いてくるので、まずは「その会社のインフラエンジニアが、どこまでの範囲を担っているのか」の情報収集をし、少しでも「やってみたい」と思えるかどうか確かめてみると良いと思います。

おすすめの勉強方法は、技術書をたくさん読んでみること。私も最初の頃は難しいと感じましたが、書籍から学んだことは多いです。Web上でTechブログなどを発信してくれているエンジニアもたくさんいるので、界隈の集合知をぜひ利用してみてください。そして実際の職場に入ったら、わからないことをわからないと素直に言える姿勢も成長につながります。

イベントやカンファレンスに積極的に参加してみるのもおすすめです。最近はワーキンググループもたくさん開催されていますし、Web上にある「connpass – エンジニアをつなぐIT勉強会支援プラットフォーム」なども活用してみると良いと思います。他社のエンジニアの話を聞いて「自分の環境に置き換えてみると、どうなるか」と考えてみるだけでも有意義だと思います。いろいろな人のベストプラクティスを見て、良いものを取り入れていきましょう。

私も若い頃から勉強会やイベントには積極的に出てきました。最近は登壇する機会も増えています。情報は発信している人に集まるもの。界隈で有名になることが、最新の技術トレンドを追いかける近道だと考えています。

  

川崎さんと描くインフラエンジニアの未来

 取材・執筆:外山ゆひら

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