CCNAの合格点は? 試験改定後の傾向や勉強方法を解説
2022.04.27
INTERVIEW 特別インタビュー
特別インタビュー
Toshiaki Iwamoto・大学卒業後、IT系情報専門誌の出版社に入社し、ネットワークエンジニアとしてキャリアをスタート。サーバーインフラ周りのエンジニアとしてのキャリアを積むため転職を決意し、2009年にぐるなび入社。インフラストラクチャーサービスグループのグループ長や開発部エンジニアリングセクションの副セクション長、CTL(Chief Tachnical Lead)を経て2022年より現職
いまでは考えられませんが、私が大学生だった当時はまだ一般家庭にインターネットが普及する前。インターネット自体は存在しましたが、通信速度は遅く容量もいまとはくらべものにはならないほど小さかったので、文字データのやり取りがせいぜい。インターネット上で動画や音声データのやり取りをするなど考えられない時代でした。
ところが大学を卒業する2000年代の初めには光回線などの高速ブロードバンド回線が普及し始め、一般家庭でも急速にインターネット環境が整っていきました。家庭でも常時接続が当たり前となり、インターネットを通じてやり取りできる情報量も飛躍的に拡大しました。
ダイアルアップ(※1)の時代からブロードバンド(※2)への変化を知る者として、その変化の大きさにかなり驚きました。また、さくさくと動くインターネットを誰もが気軽に使える時代の到来を目の当たりにしたことは大きな衝撃でした。
この驚きと衝撃が自分をネットワークエンジニアへの道に導いた大きな要因です。もともとネットワークには興味がありましたが、ブロードバンドの普及でインターネットが持つ巨大な可能性をより身近にかつ強烈に実感したからです。
ですから就活はとにかくインターネットにかかわれることを第一条件にしました。結局、採用試験は1社しか受けませんでしたが、その会社でならエンジニアとしてインターネットにかかわれたので、それで十分でした。
※1 ダイアルアップとは
1990年代まで主流だったインターネット接続方法で、電話用の回線があれば利用できるので普及したが、通信速度の遅さなどが欠点
※2 ブロードバンドとは
速度が遅いダイアルアップなどの通信回線をナローバンドと呼ぶのに対し、速い速度で大容量のデータ通信が可能な光回線などをブロードバンドと呼ぶ
在学中からインターネットに興味があり、技術系学部の専攻でしたから学生時代の学びとの親和性はありました。それでも、やはり大学で学ぶ知識と仕事として触れる最先端の知識には大きな違いがありましたし、エンジニアの世界は情報の更新速度もけた外れです。
それに、当たり前ですがネットワークエンジニアとしてはゼロからのスタートです。入社後はがむしゃらに勉強しました。仕事以外の時間は本当にずっと調査をしたり勉強をしたりしていました。いま振り返っても我ながら「良く続いたな」と思います。
ただ、そうやって必死に学んだことが無駄にならないのがネットワークエンジニアの世界の特徴です。
ネットワーク機器は物理的な機器なので初期不良や故障がつきものです。いつ壊れるか分からないので、ネットワークを冗長化し可能な限り障害が発生しないよう構成を考えます。
しかし100%トラブルが発生しないようにはできませんし。不測の事態も起きます。
そういうときにサービスへの影響を最小限に抑えながら短い時間で意思決定し、ネットワークを見直し切り替える。そのシビアな判断の場面ではそれまでの積み重ねが一気に試されます。日頃から積極的にさまざまな経験を積み、できるだけ分厚い知識を身に付けておく。そこが必ず活きてきます。
ネットワークの世界は、高い信頼性や障害に対する耐性がもとめられるミッションクリティカルな環境です。その厳しさも私には魅力のひとつに感じられました。というのも失敗が許されない環境で仕事をする緊張感が大きい分だけ、やりがいを強く感じられるからです。
またネットワークに何らかの障害が発生した場合に、その状況を打開するのはネットワークエンジニアの役目。社会インフラを守れるかどうかの瀬戸際で活躍をもとめられるのがネットワークエンジニアなのです。
ですからネットワークエンジニアとしての仕事で一番記憶に残っているのは、うまくいった仕事のことよりむしろ大規模障害への対処のことです。その際の対応内容や緊張感は今でも鮮明に覚えています。苦い経験であると同時に、ネットワークエンジニアとしてのある種の醍醐味を感じた経験でした。
最初の会社では社内ネットワークや自社運営サイトを担当するネットワークエンジニアとして仕事を始めました。具体的にはネットワーク機器のケーブリング、ルーターやスイッチングの手配設定、ファイアウォールのシステム作りといった仕事を続けていましたが、6年ほどすると経験値も積み上がるし、勉強のかいもあって仕事に自信を持って当たれるようになりました。
そうなると今度は自分が知らない領域の仕事にもチャレンジしたくなるのが自分の良い所であり悪い所でもあります。次第にサーバーインフラや、あるいはアプリケーション寄りの仕事への関心が高まったので、それまで培ったネットワークエンジニアのキャリアを捨てる覚悟で転職を決意。サーバーの仕事に携われる「ぐるなび」に入社しました。
ネットワークエンジニアとしては一人前でも、サーバーエンジニアとしては駆け出しですから、また一からの勉強が始まりました。それが20代の終わり頃で、転職がもう少し遅かったら一から出直す道は選べなかったかもしれません。
再び猛勉強しましたね。本を読むことも重要ですが、より重視したのは実際の機器に触って動かしてみること。クラウドなどの便利なものがまだない時代ですから、安くない機器をわざわざ自腹で購入し、ドメインを取得して自宅にサーバーを立て、配信してみて動きを確かめたりしました。
サーバーってエアコンの室外機よりうるさいんですよ。それを部屋の中に置いて。電気代もかかるし、ときどき「こんなことまでして自分はいったい何をやっているんだろう」と我ながらあきれたこともありました。それでも仕事後の夜間や土日のプライベートな時間を費やして、触って、動かして、いじって、サーバーの知識と技術を自分のものにしていきました。
その後、クラウドが台頭したのでクラウド分野についても学ぶことになりました。いったんはネットワークエンジニアの仕事を離れたわけですが、サーバーエンジニアとしても仕事ができるようになり、結果的にネットワークにもサーバーにも、あるいはクラウドにも通じたインフラ系のエンジニアとして自信が持てるようになりました。
そうなって改めて分かったのは、ネットワークの知識と技術を最初に身に付けておいて本当に良かったということ。クラウド時代でもネットワークエンジニアの知識は十分に役立ちますし、ネットワークの知識を知ることで時代に合った最先端の技術を活用できます。
とくに私のような事業会社に所属するエンジニアにとっては重要なポイントです。若い頃はエンジニアとして頑張りましたが、あくまでも純粋にネットワークエンジニアとして頑張っていただけです。正直なことを言えば、自社のECサイトをどう変えれば儲かるようになるとか、会社の利益にどうつながっているのかなどは、考えていませんでした。
しかし事業会社で働くエンジニアにとっては、その知識や技術は結局のところ会社の利益につながらなければ意味がないわけです。自社のプロダクトをどうやって良くしていけば利益が出るのか、その観点からエンジニアとして適切な技術を選択し、最適解を提供するのが役割なのです。
つまりエンジニアであっても、システムを作るだけでなく、作ったシステムを上手く使ってプロダクトを売るところまでを考えることが必要とされるのだと思います。
そういった考え方の重要性は、キャリアのポジションが上がるにつれてより強く意識するようになりました。グループ長や副セクション長、CTLなどの立場になると、また新たな視点を持つようになります。
たとえばエンジニアとして会社の利益につながる技術的な最適解を提案しようとしても、うまく実際の利益につながるとは限りません。また最適解に至るプロセスに無駄があることも考えられます。つまり技術的な最適解だけでなく、それを産み出したり活用したりする組織も常に進化し、技術と同様に先端的でモダンなものでなくてはならないのです。
ですから組織自体のモダン化を図らなければなりませんし、誰かがその役目を果たさなければと考えたときに、自分がそれをやろうと思い、より大局的な立場で仕事をする意味を見出しました。それがCTOという現在のポジションにもつながったのだと感じています。
もちろんネットワークエンジニアなりサーバーエンジニアなり、インフラ系エンジニアを究めるのも素晴らしいキャリアだと思います。自分なりに勉強を続けネットワークエンジニアとして全力を尽くしてきた時代にも、正直なところネットワークエンジニアとして「この人に敵わないな」というスペシャルなエンジニアがいました。
そうした方々が道を究め日本のネットワークの発展に貢献してくださっているのは尊敬すべきですし、私はエンジニアの生き方を一つに限定する必要はないと思います。私のようなキャリアも、スペシャリストの道を行くキャリアも、どちらも正解にできるのがネットワークエンジニアの魅力でもあります。
一方でネットワークエンジニアは現代社会を支えるネットワーク領域の専門家ですから、その知識や技術は幅広く応用できます。クラウド時代でもネットワークエンジニアの知識は十分役に立ちますし、ネットワークの知識を知ることで時代に合った最先端の技術を活用できます。
このままクラウド化が進行したらインフラエンジニアのやることがなくなるのではという質問を受けることがありますが、そのように考えたことはありません。むしろやることは増えると思います。
最近話題の生成AIもネットワークがあって初めて力を発揮できますし、ネットワーク技術の現状やレイテンシ(通信の遅延時間)も考慮しながら全体を作り上げていかなければ実際の使い物にはなりません。ここでもネットワークの知識が欠かせないのです。
ネットワーク機器のクラウド化は進むと思われますが、クラウドを使う仕事をしていてもネットワークのレイテンシとか、通信の橋渡しをどうするのかとか、結局ネットワークの話になることが多くあります。
IoT、クラウド、コンテナ、生成AIと注目を集める技術が次々と登場しますが、全部の基礎となるのがネットワークの存在です。今後もIT技術や、それを支えるネットワーク技術も進化し続けるので、ネットワークエンジニアが新たなことへチャレンジすることは十分に可能です。
ネットワークエンジニアにもとめる適性は、ネットワークが人々の仕事や生活を豊かにするために欠かせない生活基盤であることをきちんと意識すること。
ネットワークはもはや電気や水道と同様に、誰にとっても必要不可欠なものになっています。そのような重要インフラに携わるという自覚を持ち、人々の生活が豊かになるように、便利に使えるネットワークを作り続けていく気概を持ってほしいと思います。 そのために、利用者目線を常に持ち、改善しつづけてください。
視点の多様さももとめたいと思います。というのもネットワークという巨大な仕組みを相手にするには、自分ひとりの限られた知識や発想だけでは太刀打ちできない場面が少なくありません。ですから物事に対してひとつの見方をするのではなく、自分以外の周りの人たちが、どのような視点に立っているのかをイメージし、多様な視点から導き出した柔軟な考え方が必要でしょう。
その意味で1人のエンジニアとして、ミートアップやカンファレンスには積極的に参加するようであってほしい。オンラインのイベントが格段に増え、オフラインよりはるかに参加のハードルが低くなっているチャンスを逃すのはもったいないと思います。
自分が1人で考えていた課題感や悩みが、他者との交流の場で会話をすると、同じような課題感を持っている人が想像以上に多いことを知り、勇気づけられることもあります。ミートアップやカンファレンスには、さまざまなヒントやアイデアとの出会いのチャンスが待っているはずです。ぜひともチャンスを生かして未来を切り拓いていってほしいと思います。
2022.04.27
2022.01.24
2022.01.12
2020.09.09
2020.07.03
2020.06.19
2020.06.11
2020.06.04